エンジニア未経験から要件定義の仕事へ。メンター2人のサポートで「学び続ける」姿勢を身につけた軌跡
2025.09.16

佐藤さん
今回お話を伺ったのは、文学部出身でプログラミング未経験からSEになったアルティウスリンクの佐藤さん。就活の際にエンジニアを目指すことを決め、現在は大手通信会社が運営するアプリのチャットボット開発に関わっています。エンジニア未経験という不安を乗り越え、活躍できた経緯や学習方法、仕事のやりがいについて聞きました。
きっかけは友人からの一言。「手がけた仕事がかたちになる」
ーー まず、未経験からエンジニアを目指そうと思ったきっかけをお聞かせいただけますか。
もともとパソコンも大学に提出するレポートを書く程度しか触ったことがなく、IT業界を目指していたわけではありませんでした。就職活動では当初「自分の手がけたことが目に見えてわかる仕事」をしたいという軸でメーカーや信用金庫を希望していました。信用金庫の場合、地域密着型のケースが多いので、地域に貢献している手応えを感じられるのではないかと思ったからです。そんな中どの企業もDXやAI活用を重視しているという説明を受け、IT業界に進めばDXにもAIにも関われるのではないかと考えるようになりました。
ーー その中でアルティウスリンクへの入社を決めたのはどのような理由からですか。
友人がアルティウスリンクの選考を受けていて「向いているんじゃない?」とすすめてくれたことがきっかけでした。企業研究を進めていくと、KDDIのグループ会社なのでプロジェクトの多くがKDDIグループのものであることがわかり安心感が大きくなっていきました。また、開発の上流から下流まで幅広い業務を経験できるため、エンジニアの仕事の中で何が向いているのか分かっていない私でも自分の適性を見つけられるのではないかと思いました。
ーー 入社前にプログラミングの勉強をするなど何か準備はされましたか?
正直なところ、本格的に勉強を始めたのは内定をもらってからです。そもそも技術用語が全く分からなかったので、入社後についていけるようITパスポートの参考書などを読んで用語を理解するところから始めました。あとはインターネットで見つけたプログラミングツールに少し触れてみて「こんな感じなんだ」と雰囲気を掴む程度でしたね。とはいえ学生時代にITパスポートの資格を取得するには至りませんでした。
IT業界を受けようと決めてから「プログラミングって何だろう?」と調べ始めたくらいなので、抵抗感や不安感も大きかったです。最初は黒い画面に浮かぶ英語や数字が呪文のように見えて「全然わからない、どうしよう……」と諦めの気持ちになったくらいでした。
ただ、アルティウスリンクの採用チームの皆さんが「全く知識がなくても、研修でしっかり教えます」と宣言してくれたので未経験のままで安心して入社できました。同期が90人くらいいるとも聞いていたので、分からなければ誰かに聞けばいいという気持ちで飛び込みました。
自分の仕事がニュースになる。チャットボットの要件定義
ーー 現在の具体的な業務内容と、やりがいを感じる瞬間について教えてください。
大手通信会社のKDDIへ常駐し、auユーザー向けアプリや問い合わせ用のLINEに搭載されているチャットサポート機能の開発に携わっています。例えばお客様が「今月の請求金額はいくらですか?」と質問した際に、適切な回答を返すためのフロー(会話の流れ)を設計しています。 最近では生成AIを導入するプロジェクトも進めていて、チャットボット展示会に足を運んで情報収集したり、得た情報をチームに共有して「こういうことに活かせそうじゃないですか」と提案したりもします。
私が属しているチャットボットチームは4チームに分かれています。各チームにKDDIの社員や協力会社のメンバーの方がいて、プロダクトオーナーやスクラムマスターがいるという構成になっています。1チームは7〜8人で、スクラム開発を採用しており私はスクラムマスターのアシスタントのような業務を行っています。具体的には、プロダクトオーナーから降りてきた開発案件をチームに伝え、開発やテストを進めて四半期ごとにリリースするという流れです。エクセルや自社開発ツールを使って設計図を作成することが多いですね。
会社間の壁や上下関係は全くなく「みんなで一緒に頑張ろう」という雰囲気なので気軽に質問し合っていますし、一緒にランチに行くこともあります。
やりがいを感じるのは、自分が設計したフローを実際にお客様が使ってくれている様子をデータで見ることができたときですね。また、大きなプロダクトをリリースした際にはネットニュースやテレビで取り上げていただくこともあります。2025年新たにリリースしたサービスは、生成AIを活用してお客さまのお問い合わせの意図を解釈し、音声やテキスト、画像を組み合わせた回答を提示するデジタルヒューマンサービスということで大きな反響がありました。話題のサービスに関われて、社会に貢献できている実感を得られたのはとても嬉しい瞬間でした。「自分の手がけたことが目に見えてわかる仕事をしたい」という就活のときの願いが実現できました。
初配属は要件定義の仕事。プログラミングだけがITじゃないと知った
ーー 実際に入社されて、入社前のイメージとギャップはありましたか?
良い意味でのギャップはありました。選考の段階から「上流工程に携われる」と聞いていたものの、とはいえ新入社員は全員プログラミングから始めるのだろうと思っていたんです。ところが最初に配属されたのは、プロダクトオーナーのアシスタントとして要件定義などを行う上流工程の部署でした。プログラミングをすることはほとんどなく、開発案件の説明をパワーポイントにまとめて開発メンバーに伝えるのが中心で、「プログラミングができなくても、自分の能力を活かせる場所があるんだ」と大きな発見がありました。
エンジニアは忙しいイメージがあったのですが、残業はほぼなくいつも定時で帰れています。中には習い事に通っている先輩もいますし、産育休を経て長く働いている方もいらっしゃいます。
ーー 入社後の研修はどのような内容だったのでしょうか。
最初の3ヶ月間が研修期間でした。1ヶ月目はビジネスマナー、残りの2ヶ月でLinuxやAWSに触れてみようという技術的な内容を学びました。実際にLinuxのコマンドを打ってみたり、プログラミングの基礎を教わったりととても丁寧に教えてもらえたのがありがたかったです。
研修はチーム(班)単位で進められたので、分からないことがあっても班のメンバーと相談しながら進めることができ漠然とした不安も解消されていきました。研修を受けていた同じクラスのメンバーはほぼ全員プログラミング未経験だったのでその点も安心材料になりました。講師の方が丁寧に解説してくださったので、以前は呪文だと思っていた技術用語も研修を受けるうちに「ああ、こういう意味があったんだ」と少しずつ理解できるようになっていきました。それでもまだ「ちょっと苦手」くらいですが、最初の頃の恐怖心はなくなりましたね。
ーー 研修を終えて現場に配属されてからは、どのように業務を覚えていかれたのですか。
OJTが中心でした。技術面のサポートをしてくださる先輩と、メンタル面のサポートをしてくださる先輩の2人がついてくださり、毎日朝会で進捗や課題を共有しながら業務を進めていきました。ただ、配属先の新入社員は私1人だけだったので最初の頃は不安も大きかったです。
先輩からのアドバイスで印象に残っているのは「5分考えて分からなかったら、それはもう自分では解決できないことだからすぐに聞いてね」と言われたことです。その言葉のおかげで、遠慮せず周囲にひたすら質問することができました。 あの期間がなければ今の自分はなかったと思います。
また、資料作成で完璧を目指しすぎて悩んでいたときに「とりあえず7割を目指してやってみよう」とアドバイスをいただいたことも支えになりました。「最初から100%のものを出さなくていいんだ」と思えたことで肩の荷が下りて、精神的にとても救われました。
自分の長所がわからなくなり、2人のメンターに支えられた1年目
ーー 未経験から新しい環境に飛び込んで、大変だった時期もあったのではないでしょうか。
1年目の12月から翌年の3月にかけてが一番きつかったですね。私が携わっているプロジェクトは四半期ごとにリリースがあり、アジャイルのスクラム開発という手法をとっているため、とにかく開発のスピードが速いんです。1つのことに時間をかけていると、どんどん置いていかれてしまう状況でなかなかついていけませんでした。しかもその時期はOJTの先輩から独り立ちを促されるタイミングでもあり担当する案件も増え、やることが溢れてしまって……。
ーー その困難な状況をどのように乗り越えられたのですか。
まずはメンタル面のサポートをしてくださっていた先輩に「仕事がさばききれません」と正直に相談しました。 そこで、先輩と一緒にタスクの優先順位を整理するところから始めました。 同時に、研修の時に行っていた「KPT(Keep, Problem, Try)」という振り返りの手法を実践してみようと思い、先輩に協力してもらって、何を続けるべきで何が課題で次に何を試すべきかを洗い出していきました。
当時は「自分は何もできない」という思考に陥ってしまって、自分の良いところがわからなくなってしまいました。 そこで毎週金曜日の振り返りの際に、先輩に「今週の私のいいところを教えてください」と聞くようにしてみたんです。そうしたら「人が聞きづらいことをすぐに聞けるのはすごい長所だ」「周りを巻き込む力がある」などの言葉をいただきました。先輩のアドバイスと伴走のおかげで、自分は周りからこう見えているんだとわかり、良いところに気づけましたし長所をもっと伸ばしていこうと前向きになれました。
目指すはチームを導くスクラムマスター。プロダクトオーナーにも挑戦したい
ーー 今後のキャリアについて、どのような目標をお持ちですか。
まずは今のチームでスクラムマスターになることを目指しています。実は配属後にスクラムマスターの資格を取得したのですが、来年には今のチームに来て2年になるのでその頃には開発業務全体を網羅してチームをリードできるスクラムマスターになっていたいです。その先は、案件全体を管理するプロダクトオーナーにも挑戦していきたいと考えています。
そのために今は基本情報技術者試験の資格取得を目指して勉強中です。1人で勉強してもなかなか続かないので、休日に先輩と図書館で勉強会を開いたりチャットで問題を出し合ったりしてモチベーションを保っています。
ーー 最後に、佐藤さんと同じように未経験からエンジニアを目指している方に向けてメッセージをお願いします。
私がIT業界に飛び込んでみて一番伝えたいのは「未経験でもエンジニアとしてやっていける」ということです。もちろん学生のうちにITパスポートの資格を取ったり、プログラミングに触れておいたりすると専門用語での会話にもついていきやすくなるので、よりスムーズに業務に入っていけると思います。
入社してからは、とにかく分からないことはすぐに質問することが大切です。 そして定期的に「KPT」で仕事の振り返りをすると、自分の良い点や改善点が見えてきて成長につながると思います。不安もあると思いますが飛び込んでみればきっと道は開けるはずです。
ーー 本日は貴重なお話をありがとうございました。
編集後記
「最初はコードが呪文に見えた」と語る佐藤さんが、今では大規模なチャットボット開発の最前線で活躍されている姿は頼もしく感じました。印象的だったのは困難な状況に直面したときに一人で抱え込まず先輩を頼り、客観的な視点を取り入れるようにした点です。技術面・精神面双方のメンターがいるアルティウスリンクのサポート体制も安心ですよね。未経験からエンジニアを目指す方は、こうしたキャリアの築き方もあるのだとぜひ参考にしてみてくださいね!